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拭き漆
当工房の家具の塗装では、木の素材感を生かすのに最も適した「オイル仕上げ」と「拭き漆仕上げ」にこだわっています。

拭き漆仕上げ拭き漆仕上げの際に欠かせないのは、とにかく素地をきれいに仕上げる事です。必ず鉋(かんな)で適切に表面を削り、その後には非常に細かい番手のサンドペーパーで表面をきれいに磨きます。理想を言えば、名人が鉋だけで仕上げて終わるのがベストです。でもなかなかそのようには行きません…。

鉋できれいに削る事で、その木が持つ素晴らしい味わいが浮き上がってきます。表面がへたくそに削られていたり、ささくれや傷、汚れなどが少しでもあろうものなら、拭き漆はそれらをすべて晒し出します。ですから特別デリケートな仕上げ精度が要求されます。

以下に「拭き漆仕上げ」に使用する主な道具と簡単な工程をご紹介致しますが、漆の世界は奥が深いので、ここではごく簡単な説明にとどめておきます。
拭き漆仕上げ拭き漆に使用する主な道具です。手前左から、拭き漆専用刷毛、漉し紙、蓋紙、はさみ、どんぶり、拭き漆用に調合された漆、ゴム手袋、へら、ティシュ、テレピン油、シンナーまたは白灯油です。この他にウエス(拭き取り用)や加湿器等も必要です。
拭き漆仕上げ拭き漆専用の刷毛です。人間の髪の毛を束ねたものを桧(ヒノキ)ではさんで作られています。

海女の髪の毛が一番だとか、結婚していない女の人の髪の毛がいいだとか色々面白い話があるようです。
拭き漆仕上げ拭き漆にはそれ用に調整された専用の漆を入手して使います。国産のものになると貴重なので、このくらいの大きさで数万円もします。
拭き漆仕上げ漆を桶から漉し紙の上に出します。この漉し紙は通常「吉野紙」とよばれるものです。
拭き漆仕上げ漉し紙を両手でひねって漆を漉し出します。ゆっくりと時間をかけてひねり出します。
拭き漆仕上げへらや刷毛を使って漆を塗っていきます。あまり厚く塗らないように、摺りこむように刷毛で塗っていきますので「摺り漆」とも言います。

漆はすぐ乾いて固くなりますから、手早く塗らないといけません。塗るのが遅いと後で拭き取りが大変な事になります。
拭き漆仕上げウエスで拭き取っていきます。拭き残しやムラが出ないように、丁寧に拭き取ります。
この後、温度(28度)と湿度(80%)の管理された場所に置いて乾かします。漆の専門家のように専用の漆室(むろ:漆風呂とも言います)があればいいのですが、無い場合はあの手この手で部屋を改造して理想の温度、湿度に近づけます。

道具の後始末も大切です。高価な刷毛が固まって使い物にならなくなる事のないよう、よく漆分を落とし、タネ油につけておきます。又、桶やどんぶりに残った漆が外気に触れて固まらないよう、蓋紙(専用の蓋紙)をきちんとしておきます。

このような工程を何回も何日間にも渡って繰り返します。漆の作業は、本作業はもちろんの事、準備や後始末にも随分手間がかかります。又、温度や湿度の管理にも気を掛け、手間を掛けます。非常に大変な作業ですが、他には代えがたい漆の良さを出すためには仕方のない事なのです。

【こぼれ話1「漆かぶれ」】
漆を扱っていると多かれ少なかれ皮膚に付いたりします。(ゴム手袋をはめていても、どうしても少しは付いてしまいます。) そうすると、たいていの人はかぶれます。私自身は、運良くかぶれた事が無いのですが(両親に感謝)、かぶれると時には高熱が出たりする事もあり大変です。治すには病院へ行くしかありません。昔は、沢蟹をつぶしてそれを患部に擦り付けたりしたそうですが、果たして効くのかどうか分かりません…。

ところで、漆は空気感染する事は絶対にありません。触らなければ大丈夫です。又、作品になった漆製品は完全に乾いていますからご安心を。

【こぼれ話2「缶詰状態」】
拭き漆の作業に入ったら、終わるまでは途中で休憩は無しです。なぜならば漆が固まったり、乾いたりして台無しになってしまうからです。午前中いっぱい閉じこもって作業する事などもよくある話です。

ですから来客があろうと電話が鳴ろうと一切出ません。(悪しからずご了承下さい。) 陶芸家に例えると、オイル仕上げがガス窯や電気窯なら、拭き漆仕上げは登り窯のようなものでしょうか。結構気合を入れて作業に取り掛かるものです。