木には木目がありますが、時としてそれが素晴らしく美しい木目であったり、珍しい模様の木目になったりします。それを総称して「杢」と言っています。「杢」には様々なものがありますが、いくつかを紹介すると以下のものがあります。
「縮み杢」
木目が波のように縮んで、しわがよったように見えます。多くの材質に見られますが、特に栃(トチ)、楓(カエデ)、栓(セン)などによく見られます。バイオリンの胴体にはよく楓(カエデ)の縮み杢が使用されています。
「玉杢」
丸い玉のような模様が一杯出たものです。細かい玉がいっぱい出たもの、大きな同心円状の玉が大胆にいっぱい並んだもの、少し楕円上のものなど様々あります。様々ある杢の中でも、素晴らしい模様の玉杢は最高級とされます。欅(ケヤキ)、タモ、栓(セン)などによく見られます。

「虎杢」
まるで虎の体の模様のように規則正しく縞模様になったものです。いろいろな材質で現れますが、栃(トチ)、樺(カバ)、ミズメザクラなどによく見られます。


「鳥眼杢」
小鳥の目のように小さい丸い斑点のような模様がいっぱい現れたものです。特に楓(カエデ)によく見られ、「バーズアイメイプル」と言ったりします。
この他にも「笹杢 (ささもく)」「如鱗杢 (じょりんもく)」「鶉杢 (うずらもく)」「葡萄杢 (ぶどうもく)」「バール杢」などなど、さまざまなものがありますが、よく目にするのは上記の4種だと思います。又、「杢」と言うほどのランクには入らないと思いますが、「虎斑(トラフ)」というものもあり、楢(ナラ)や樫(カシ)などに見られます。
以上のように大変美しく見事な模様のものは希少価値があり高価なものですが、実はそこまでいかなくてもきれいな模様の木目はよく見られます。
例えば次のような栃の板。このような板は「杢板」というランクには入らないと思われますが、表面には「縮み杢」や「虎杢」のようなものが混ざって見られます。この板も十分きれいです。でも、上記のような本当の「杢板」と比べるとそこまでの素晴らしさではないので、価格的にはお値打ちになります。
よくお客様から「杢が出た板が欲しい」というような事を聞きますが、その真意を計りかねる場合が多いです。本当の意味の「杢板」なのか(当然相当高価となります)、はたまた上記の栃の板のように「杢っぽい美しい模様が出た板」なのか(これぐらいならお値打ちになります)…。実際よくお話をしてみると、やはり「杢っぽい美しい模様が出た板」ぐらいのイメージであったという事がよくあります。その差は何十万円となってきたりしますので、そのあたりをよくご理解頂いて私どもにお話頂ければと思うのです。
蛇足ですが、このような素晴らしい杢の板は、実は通常の板と比べて加工にも手間がかかります。鉋で削るのも難しく、技術と時間を要します。又高価であるという事もありますが、神経も使います。そのあたりもお分かり頂ければと思うのです。 |